72点。
FDと言うよりも中規模の続編といった感じ。
・かりそめの旅人たち
単独作品としても優秀。
『別の生き方』という本作を通してのテーマを忠実に描いたシナリオは
突っ込むべきような所も無く、シリアスとコメディのバランスが良く、
展開もきれいで完成度は高いと思う。
これ単独なら普通に80点以上あげられる。
・復讐するは神になし
小粒ながらこれはこれで纏まっているとは思うし、『完全な復讐』の話も良かった。
一奈の別の生き方は、本編では姉と違い背景説明や救いが無かった彼女を補完するという試みで、
実にFDらしい内容だったと言えるだろう。
コゼットが一奈の母親がわりになるという話は、ちょっと二次創作チックかなぁ。
元々ある性質を利用したというより新規の設定をつけて話が展開していった感じ。
あんまりこっちの話は『Bullet Butlers』の世界観でなければいけない、という所に乏しくて、
九鬼先生がファンタジー世界のドラゴンとかと戦うみたいな点以外には
この世界でなければ~という様な話はなかったように感じた。
「かりそめの~」と根本的に違うのは『戦うこと』と『一奈をどうするか』に連関性が無い、
戦闘シーンとテーマが乖離しているところであると思う。
それからこちらはかなり「クロノベルト」への接ぎとしての意味合いが強く、
単独で見るよりも「クロノベルト」とセットで見るべき点が多く、
本作単独だけの話は最初の行に書いた感想の通りかなー。
・クロノベルト
いつもの「propeller」っぽい話で、世界観を全て用いて風呂敷を一気に広げるということはせずに、 小ぢんまりとした風呂敷を畳むことが心掛けられており、 終始致命的につまらないようと感じるような躓きはない中以上の水準ではあるが、手放しでは褒められない感じ。
特に本作の場合は結構突っ込みどころはあった、以下に4つ挙げる。
まず、何故上記二作での出来事を踏襲しなかったのかは些か疑問に感じる。
確かに雲外鏡の説明に、あの時点での出来事はまだ保存されていなかったという具合の話があった。
それは何かしら今後の展開において意味があるのかとその時は思ったが、特にその後活用されるような点は見受けられなかった。
踏襲する必要性は無いかもしれないが、上二作の後にこの話が登場する訳であるし、本作で培った
「あやかしびと」の世界の住人とアルフレッド・アロースミス
「Bullet Butlers」の世界の住人と九鬼耀鋼
という人間関係をわざわざリセットするのは不自然、というか非常に勿体無く感じた。
3作が全部並行して作られて、余計な設定やらの齟齬が出ない為に本作ではそういう形にした感じなのかな。
次に、ご都合主義と割り切るべきなのだろうけれど、エルネスタがいなかったらこの話は解決しなかった。
これさー、鈴とかセルマとかは力が強すぎてコピー出来なかったっていう説明があって、
エルネスタってのは魔法使い、言うなれば周りのマナの扱いというスキルに長けている訳で、
その存在自体が強力という訳ではないと見るのが個人的な理屈の通った解釈なのだけれど、
そもそも世界を創るとか、マナもある(これは雲外鏡・妹の力を行使する為か?)とか、
何が出来なくて、何が出来るとかいう判断は理屈じゃなくて完璧に設定依存。
一言『ご都合主義』で済ませられる話なんだけど、
こういうのは何というか受け手側に考える余地が残されていなくてただ展開にのみ流される感じが歯痒い。
あと個人的にはこれが一番しっくりこなかったのだけれど、
アルフレッド・アロースミスとルダが人柱になる最後。
何で?ていうか只そこにいたからなりました、みたいな話じゃん。
ルダがアルフレッドと別れてまた兵器として戻るのは嫌だからだという理由だけでそんなになっちゃっていーんですかいと。
あとは朽ち果てるのみであるし、大体は一つ上の話と似た質の問題だけどアルフレッドの言う「本分は守護するもの」というのを大きく捉えて世界を守るものとなったみたいな形と見るべきなのかな。
それからエピローグで『現実世界での』双七くんとリックが混沌都市での出来事を夢に見たのは何で?
完全に異世界なんだから何でそこがリンクしちゃうのか疑問に思った。
(まさかとは思うが全く出番がなかった、す…す…すなんとかさんとかにも一応出番作っておこうとかいう話なのか…)
そうじゃなくてあれは『混沌都市での』二人の話で、混沌都市の世界が再構築された結果、
双七くんとリックが『この出来事を忘れない』と言っていたのが夢という形で反映されたということ?
それだと『混沌都市でのセルマを守れなかった』ことを背負うと誓ったリックや贋作のセルマの存在を蔑ろにしているし、それは流石にないんじゃないかなーとは思ってるんですけど結局どーなんでしょうかね。
私の読解能力に問題があるのかもしれませんが、ムックとかそういうのに載ってるのかな。
最後にこれは粗ではないけれど本作はマグダラが死んでおらず、大団円では終わらない。
個人的には続編を匂わせる終わり方は悪くないと思うけど、次作作る気あんのかな。